さて、それではそもそも五平餅とは何かという特徴や定義について考えなければなりません。一体、この地域の五平餅といわれる食べ物の特色は何か、ということです。
五平餅の形や味からそのあたりのことに迫ってみたいと思います。
五平餅の形は、代表的なものとしては「御幣」「わらじ」「丸」「団子」「棒」といろいろあります。これは、その土地に五平餅がどのように伝わったのか、どのように食べられているのか、ということに大きく影響されていると考えられます。起源を考えた際に食べやすく、
火が通りやすく形を考えたのではないか、ということも申しましたが、当然調理方法からの形の要請もあるでしょうし、
また誰に出すのか?道行く旅人に出すのか、山里を訪れた・家に招いたとかお祭りのご馳走として出すもてなしの
ための料理なのか、携帯食なのか、によってもお米の量も、食べやすさを考えた形も異なってきます。
また形には他の料理や文化の影響もあります。たとえば都に近い地域では、みたらし団子のようなもの
などに影響をうけて形を変えたりした可能性もあります。
正直なところ、その土地の文化(生活・交流)によって様々な形があるのが現状です。
豊田市域に限定して考えても、その密度は別として(わらじ型が大勢を占める)、様々な形があります。
次に味、についてですが、味噌やたまり、醤油をベースとして、その土地の産物を織り交ぜた味付けに
なっています。ゴマ、くるみ、ヘボなど、それぞれコクやうまみをその地域で考えて作られています。
ピーナッツなどを使うところもありますが、それも地域の食材の代用品として捕らえられます。
こうした、形・味ともに、地域の特色を映した郷土食、それが五平餅の魅力となっています。
【五平餅とは】
すると、五平餅とは何か、ということを考えれば、それはまず第1に山の暮らしから生まれた食文化ということです。
お祭りのお供えやおもてなしのご馳走、保存食、携帯食、観光客に出す食事と、いろいろな利用方法(作られる目的)があり、その形も多様ですが、その背景には、この五平餅を生み出した山里の生活文化があります。
また、中馬街道の陸路コースを通じて伝播したこと(ここで主張する「説」ですが)、地域の食材を用いていること、そして食べやすさなどに応じて形も変化する柔軟さなど、を勘案するならば、一言で言えば、山の生活文化を背景とした(分布圏域もしくは豊田市域の)「地域のくらしを反映した郷土食」と定義できます。